「Dying for Fur」 中国の毛皮産業レポートから10年、状況は変わったか

2015/06/08

全世界に衝撃を与えたレポートがある。
スイス等の動物の権利団体に匿名でリークされた中国毛皮産業の実態を伝えるレポートだ。
この2004年の調査を機に、全世界が中国のあまりに悲惨な動物たちの現状に、危機感を覚え、報道した。
その後も改善されていないが、この映像、レポートを見て毛皮をやめた人は多い。

日本でもアニマルライツセンターからレポートを発信した。
当時、あまりの悲惨さから「これは現実ではないのではないか」などの意見が相次いだ。しかし、残念ながらこれは同じ地球上で起こっていることだ。
さらには、日本の人々がこの残虐な飼育と殺害に衣類を購入することで出資してしまっているのだ。

この2005年以降、たびたび、中国の毛皮産業における動物の扱いが変わっていないことを裏付ける映像、報道が世界中にリークされている。

アニマルライツセンターでは、倫理的消費活動を求める会とともに、特設サイトで公開していたが、公開から10年たたった今でも状況は改善されていないことを踏まえ、再度、アニマルライツセンターのサイトでレポート全文を公開する。
日本での輸入量が減ってきているとはいえ、いまだに中国には動物を守る法律はまだできていないし、今でも日本は毎年200万頭分の動物の毛皮を輸入しているのだ。

あらためて、中国における状況を把握してほしいと思う。
 

Dying for Fur

© EAST International (台湾動物社会研究会)/ Swiss Animal Protection Society(スイス動物保護協会)
 
2005年1月
※写真は残酷なシーンを含みます、しかし、これは真実であり、日本に輸入される毛皮の実態です。

容赦ない虐殺:中国の毛皮動物養殖現場のおぞましい現実

ハインツ・リーンハード、スイス動物保護協会(SAP)代表
2005年2月1日、SAP記者会見(スイス・チューリッヒ)、オープニング・スピーチ
 
ファッションと虚栄心のための毛皮製品の為に、数百、数千の野生動物がバッテリー・ケージに詰め込まれ、そして無残に殺される、スカンジナビア諸国や東ヨーロッパの毛皮事情を、多くの人は知っているかもしれません。毛皮産業による「適切な飼育方法」「毛皮生産国の動物福祉法の充実」「心身共に健康な動物からしか良い毛皮はとれない」といった謳い文句は、でたらめであることも多くの人にとっては周知の事実です。冬期、富裕層でにぎわう一部のリゾート地を除いて、毛皮のコートやケープ、その他の高級な毛皮製品は、スイスの街角から完全に姿を消しました。多くの人は、毛皮を着ることを恥ずかしいことと思うようになりました。また、このような軽薄な贅沢に多額のお金を注ぎ込むことは、馬鹿馬鹿しいと思う人も少なくありません。毛皮以外にも、暖かくてお洒落なファッションはいくらでもあるのですから。
 
しかしながら、毛皮は今でも巨大なビジネスであることに変わりはありません。毛皮動物のブリーダー、養殖業者、輸出入業者、卸売業者、小売店、ブティック、デパートなど、毛皮関連産業の生み出す経済効果は留まることを知りません。過去に毛皮の売上げが落ち込んで以来、毛皮産業は、「新たな戦略」を探ることに執念を燃やしてきました。そしてその結果かれらがたどり着いたのは;
“誰にでも手に入る、大量生産された安価な毛皮製品”です。高価な毛皮のロングコートの替わりに、いまや毛皮は、ブーツやパーカー、ジャケットを飾るワンポイントとして‐子供用の衣類にさえも‐あらゆるところに登場しています。毛皮大流行の再来です。
 
フードや襟元の装飾として使われる、多くの“お手頃価格”の毛皮の大部分は、今日の毛皮生産の最大拠点である中国からやってきます。中国では毎年150万匹分のキツネの毛皮、ほぼ同数のタヌキの毛皮を生産しているとされています。その他にも、ミンク、犬や猫といった動物の毛皮までが“生産”されています。中国は、近年の毛皮マーケットを事実上独占しているといっても過言ではありません。
 
最低限の動物福祉基準さえもないその国で、数百万匹の動物が、他の毛皮生産国で伝統的に使用されてきたのと同じ、金網のケージに詰め込まれて飼育されていることは驚くべきことではありません。しかしほんの数週間前まで、それらの動物たちが、実際にどのような殺され方をしているのか、本当に知る人はいませんでした。毛皮生産が大規模に行われている様々な地域を巡り、中国のこの残酷なビジネスの現状を隠しカメラに収めた、アジアの動物保護活動家グループの協力のもと、スイス動物保護協会(SAP)はここに、その映像を公開します。SAPが行うこの調査報告は、数々の国際的な動物保護・福祉団体の賛同を得ており、西洋諸国で行われてきた毛皮動物の劣悪な養殖、残酷な殺傷方法でさえも、些細なことと錯覚してしまうほどの内容です。
 
この背筋の凍るような、恐ろしい中国からの映像を公開するにあたり、国際社会のすべての人に、彼らの身に着けている毛皮の装飾の裏にある真実を知るよう、強く呼びかけるものです。それらの動物がどのような一生を強いられ、そしてどのように死ななければならなかったのか、という真実の映像です。この筆舌に尽くしがたい行為は、文明社会にとって、恥ずべきものであり、それが終焉を迎えるためには、人々がその真実を知ることが必要です。分別のある人間がそれを知ったとき、そのような悲惨な行為から産まれた製品を購入する消費者になりたくない、と思うことが必要なのです。
 
このドキュメンタリーには、キツネをはじめとする野生動物が主に映っています。しかし忘れてはならないのは、私たちが通常、コンパニオン・アニマルとして認識している動物の毛皮も、中国は輸出しているということです。犬や猫も、他の毛皮動物と同様の悲惨な状況で飼育され、同様の残酷な死を遂げているであろうことは想像に難くありません。動物保護法改正に向けての話し合いの中で、スイス経済産業省大臣であるジョセフ・ダイス氏に、中国からの犬と猫の毛皮の輸入だけでも禁止するよう、個人的に申し入れをしたことがありました。ヨーロッパの他の多くの国や米国では、既にそれは禁止されていますが、私からダイス氏への懇願は結局聞き入れられることはありませんでした。この映像をダイス氏にもご覧いただけるよう要望するつもりですが、彼がそれを最後まで見る勇気があることを願います。
 
このほどSAPは、アジアからの犬猫の毛皮輸入に反対する、80,000名分の署名をベルン議会に提出しました。この問題は、ポール・ギューンター議員によって国会討論にかけられる予定であり、我々は、このおぞましい産物がこの国から禁止されるまで、活動の手をゆるめません。
 
最後に、今回の潜伏調査および撮影を行ったアジアの活動家に、敬意を表したいと思います。彼らは相当なリスクを背負ってこのプロジェクトに携わっており、身元が明かされれば、彼らの身に危険が及ぶことは言うまでもありません。その為、映像の中では彼らの声さえも変えなければなりませんでした。身元を明かさないということは、彼らが値する賞賛を得ることもないということです。この場を借りて、勇気ある彼らに心からの感謝と尊敬と賞賛の意を表明します。個人的にそれらの気持ちを伝えることはできませんが、せめてこの公の場で、匿名の彼らの貢献を讃えたく思います。
 
ハインツ・リーンハード

概略

 このレポートは中国の毛皮養殖場の内部についての、初めてのものです。河北省にあるいくつかの養殖場が、この実地調査の対象として選ばれました。これらの施設がそれぞれ保有する動物の数は、50頭から6000頭におよびました。このレポートは、2004年から2005年1月にかけて行われた実地調査及びその他の調査に基づいており、中国の毛皮産業に関する基礎的な情報および動物の飼育法と屠殺手段の記録の提供と説明を行います。レポートは又、EU諸国や英国に直接関係する事項を含む、グローバルな状況において、世界で最も大きな毛皮輸出国としての中国の役割を位置づけています。最後に、ヨーロッパの消費者だけでなく、世界各国の国内及び国際的政策立案者のための一連の緊急勧告を列記しています。
 
少なくともこの10年の間、国際的な毛皮産業は連携し、多くの資金を投じ、毛皮を身につけるのに伴う道徳的汚名を晴らすことを目的としたPRのための、巧妙なグローバルキャンペーンを行ってきました。新しくファッショナブルな色に加え、刈り込んだり編み込んだりといった新たな製造プロセスを採用し、シルクやウール、スウェードやなめし革を混ぜた毛皮は、目新しさと多様さを毛皮に与えました。
毛皮の装飾のついた(例:襟元やスカーフ、フード)アクセサリーや衣類、靴の着実な市場拡大は、ほとんど気づかれないうちに、毛皮を街中に引き戻しました。
 
より若く、流行に敏感な市場をターゲットとし、正装からスポーツウェア、高級な仕立て服から大量生産された既製の手ごろな衣類まで、現在毛皮は、あらゆる衣類や衣類付属品に含まれています。
世界中の毛皮売上高は、2001年2月で合計約110億ドル(約1兆1550億円)にのぼりました。EUは世界で最も大きな毛皮消費地域であり、1990年代半ばからEUでの販売数が急激に増加しています。毛皮製品と、毛皮装飾のEUでの売り上げは、2002年~2003年で452万5千ドルと見積もられています。
 
毛皮動物の養殖は英国では禁止されていますが、ロンドンには毛皮のバイヤーのためのワールドセンターがあります。国際毛皮連盟(IFTF)の一部であるBritish Fur Trade Association(英国毛皮協会(BFTA))の45人のメンバーが、小売業者、貿易業者、卸売業者、メーカーの代表をしています。BFTAのメンバーは、原皮と言われる第一段階で世界の毛皮の大部分をまとめて購入します。それによる年間取扱高は約5億ポンドになります。世界の毛皮の85%は養殖場からもたらされています。業界筋によると、IFTFのメンバーでもある中国は、世界最大の毛皮衣類の輸出国であり、世界最大の毛皮生産と加工の拠点です。それらの毛皮の25~30%は、野生動物からとったもので、70~75%は飼育された動物からのものです。中国は動物福祉のための法的条項がひとつもない、世界でもわずかな国のひとつです。
 
中国にあるほとんどの養殖場は、過去10年の間に設立されました。毛皮のために飼育される野生種はアカギツネ、北極ギツネ、タヌキ、ミンク、ウサギが含まれます。中国の毛皮産業関係者によると、毛皮貿易商、加工業者、ファッションデザイナーはそのビジネスの拠点を、低賃金労働が横行し、操業を複雑にする様々な制限や法規制のない中国に、徐々に移動させ、利幅の拡大を図っています。
 
国際的な毛皮産業の構造は複雑です。毛皮は、最終消費者の手に届く前にいくつもの国を通過し、さまざまなプロセスを経ています。中国税関統計は、2003年の毛皮の輸出入量が前年から42.5%増加し、9億9760万USドルに達したことを示しています。中国製の毛皮製品の95%以上が海外市場に売られ、香港から輸出される毛皮の80%がヨーロッパ・アメリカ、日本にもたらされています。中国で生産される毛皮製品は、毛皮単体、コートに留まらず、スカーフや帽子などのアクセサリー類、衣類の装飾や他の繊維と複合された衣類、玩具や家具などにもおよびます。スイスとロンドンのブティックとデパートで無作為に行われた市場調査では、「中国産」というラベルのついた毛皮の衣類が、高級ブランド品の中で多く確認されました。
 
イギリスでは、毛皮動物の飼育が人道的見地から禁止されました。中国で本調査の対象となった全ての養殖場で、動物は乱暴に扱われ、EUの基準よりもはるかに劣悪で不適当な小さな金網の檻の列に閉じ込められていました。極度の恐怖と病理的な行動の兆候が目立っていました。乏しい福祉基準の証拠としては他に、幼獣の高い死亡率と、親による子殺しがあります。
 
11月と12月の間、キツネは売られ、屠殺され、皮をはがれ、その皮は処理されます。動物達はしばしば、毛皮養殖者が彼らを生きたまま持ち込み、大企業が在庫の仕入に来る卸売市場に隣接した場所で屠殺されます。そこに到着するまでに、動物はしばしば劣悪な状態で長距離を輸送されます。
彼らは繰り返し頭部を殴打されるか、地面に叩きつけられます。皮剥ぎの作業は、動物を逆さにして後ろ足をフックにかけ、ナイフを用いて、腹部の下の方からはじまります。多くの動物がこの過程の間完全に意識があります。彼らは最後の最後まで闘おうとして空しくもがきます。皮膚が完全に剥ぎ取られた後でさえ、5分から10分の間、呼吸や心臓の鼓動、体の動き、瞬きが確認されました。
 
このレポートは、中国の巨大な毛皮産業において、獣医学や動物福祉、道徳的観点からみても容認できない劣悪な飼育、養殖、輸送、屠殺方法が、当然の如く横行していることを示しています。
EUおよび英国双方の規定に照らしても、これらは到底受け入れられるものではありません。
 
よって、私達は以下のことを要望します:
 
  • ファッションデザイナーは、コレクションから毛皮を排除し、動物への暴力を伴わない生地を使用すること
  • 消費者は、毛皮のコートやアクセサリー、縁取りのついた衣類を買わないこと
  • 消費者は、毛皮をコレクションに入れているデザイナーを調べること
  • 小売業者は、毛皮装飾のついた服やアクセサリーなどを店舗に置かないこと
  • ヨーロッパ議会は、中国からの毛皮製品の輸入を禁止すること
  • 中国政府は、動物の皮を生きたまま剥ぐことを禁止する法律をただちに制定すること
  • 中国政府は、非人道的な飼育と屠殺を禁止する法律をただちに制定すること
  • 中国政府は、非人道的なやり方で動物を監禁・拘束することを禁止する法律を作ること
 
 
要望により、写真と映像の提供が可能です。(©SAP)

中国の毛皮動物養殖

 フィンランド毛皮産業レポートは最近、中国絡みの毛皮売買に関して、正確な統計をとることの困難さを指摘しています。レポートでは、中国の毛皮産業の詳細な評価は不可能とした上で、中国が毛皮生産と加工において世界最大の拠点となったことは間違いないと結論づけました。
 
中国にあるほとんどの養殖場は、過去10年の間に設立されました。毛皮のために養殖される動物には、アカギツネ、北極ギツネ、タヌキ、ミンク、ウサギなどがいます。中国の毛皮産業関係者によると、近年、多くの毛皮貿易商、毛皮加工業者、ファッションデザイナーが中国に拠点を移しています。低賃金労働と、動物の福祉に関する細かい規定がないことが利点となり、より生産効率がよく、最も利益を生む方法で操業ができるからです。韓国のキツネ養殖業者によると、1990年代はじめ、カナダが中国の低賃金労働に目をつけ、200匹の繁殖用のキツネを中国に輸出しました(世界動物保護協会(WSPA)の報告書による)。
 
中国毛皮産業協会の統計によると、国内で生産される毛皮のうち、25%~30%は野生動物から採られ、残りの70%~75%は、飼育された動物から採られます。生皮の取り扱いをはじめ、あらゆる毛皮製品の生産・加工といった関連事業の需要拡大に伴い、毛皮が売買される市場や取引所も、増加の一途を辿っています。毛皮卸売および販売を行う、ある大きな市場では、2000年の1年間だけで、180万着のコート、150万枚の生皮、200万点の装飾用毛皮の取引をしていたことが分かっています。これはUSドルに換算すると2億ドルほどになりますが、それでも、中国で取引される全毛皮量の一部でしかありません。
 
中国で、商業的にキツネの養殖が開始されたのは1860年のことでした。その後、西洋諸国で毛皮動物の養殖が大きな産業となった為、1950年代半ばまでには、中国もその後を追い始めていました。1956年以降、毛皮のためのキツネの繁殖が本格的に開始され、毎年、各地の養殖場に、20万匹のキツネが追加投入された結果、併せて100万匹分の毛皮が生産されるようになりました。1980年から90年にかけて、中国が本格的に世界への輸出を行うようになると、それに伴って、国内の毛皮産業は大きな発展を遂げることになります。自治体によって運営される伝統的な養殖場と並び、個人や家族経営の養殖場が次々と誕生します。1990年代、その分野は海外からの投資も呼び込み、結果的に更に多くの養殖場を生み出します。今日では、中国の養殖場にはざっと150万匹のキツネと、それとほぼ同数のタヌキが飼育されています。
 

養殖場の実態

 アカギツネ(学名:Vulpes vulpes)体重5.2-5.9kg、頭胴長66-68cm。
北極ギツネ(学名:Alopex lagopus)体重3.1-3.8kg、頭胴長53-55cm。
タヌキ(学名:Nyctereutes procyonoides)日本に生息するものは体重2.5-6.25kg、平均体長56.7cm。フィンランド産は体重3.1-12.4kg、体長51.5-70.5cm。
 
中国の毛皮養殖場では、キツネやタヌキは金網(一つのマス目約3.5x4cm四方)でできた檻(長さ90cm、幅70cm、高さ60cm)の中で飼育されます。それらがいくつも並んだ檻の列は、地上から40-50cm離れたところに設置され、平らな床も、寝床も、屋根もありません。それぞれの檻には1~2匹ずつ動物が入れられますが、繁殖用の雌の檻だけは、レンガでできた小さな巣箱とつながっています。これは、雌が出産時と子育て時に多少の占有スペースを確保できるようにすることにより、母親による子殺しや子育て放棄による、幼獣の死亡率を下げることが目的です。
繁殖は1月~4月の間に行われます。大部分の養殖場では人工授精を導入しており、特に繁殖期の合致しないアオギツネと銀ギツネを交配するときなどに使われます。キツネは生後10~11ヶ月で生殖が可能となり、繁殖用の個体は5~7年間使用されます。雌ギツネは、5~6月の出産期に、平均で10~15匹の子を産みます。*1 春に生まれた子ギツネは3ヶ月ほどで乳離れしますが、養殖業者によると、乳離れするまでの子ギツネの生存率はわずか50%です。つまり、1回の出産で産まれた子のうち、業者の手に残るのは5~7匹ということになります。さらに6ヶ月が経過し、最初の冬毛への生え変わりが終わった頃、子ギツネは殺されます。業者は一部を繁殖用に残しますが、ほとんどのキツネは、その年の終わりには毛皮となって売られるのです。
 
強度の恐怖心、後天性の無力さ(物事への無反応、行動率の著しい低さなど)、自身の体を傷つけるなどの病的な症状がどの養殖場の動物にも見受けられ、これは動物福祉への配慮の欠如のあらわれと言えます。業者は、繁殖率の低さ、親による子殺しの多さについても語っており、福祉基準の低さを示す、更なる証拠となっています。
 
養殖業者は、キツネを檻から取り出す際、鉄バサミで首の付け根をはさみ、それから尻尾を掴みます。鉄バサミには2種類あり、2番目のものは、動物の後ろ足を掴んで逆さに吊るすときに使われます。
 
子育ての期間は6月から12月にかけてですが、その間に、繁殖用ではなく、毛皮用として選んだ動物に関して人間が気にするのは、その毛皮のクオリティだけです。最後にもう一度毛皮の成熟度と質を確かめられたキツネは、売られ、殺され、皮を剥がれ、その皮だけが製品として加工されます。
 
* 二種類のキツネの、一回の出産あたりの平均頭数。二種の交配種も含む。タヌキもほぼ同数。
 

養殖業の規模

 小さな養殖場は、通常の場合家族経営されています。中規模の施設では10~15人、大規模になると、50~数百人もの従業員を雇っている場合もあります。その中でも、山東省、黒龍江省にある養殖場および毛皮関連企業は、規模も大きく、最も収益を得ていると言われています。一箇所あたり1,000~10,000匹もの動物を飼育するそれらの養殖場の多くは、海外からの投資を受けています。最大の養殖場の一つでは、15,000匹のキツネと、6,000匹のミンクを所有していました。*2 多角経営をするこの企業は、人工授精、繁殖、屠殺、生皮処理、染色、そして毛皮製品の加工用の施設まで保有しており、海外への輸出にも力を入れています。
 
河北省では、多くの養殖業者が、唐山、樂亭、鮑虚といった都市郊外に店舗を構えています。これらはほとんどが個人経営されており、動物の数は一箇所あたり、100匹以下~数百匹です。河北省で最大の養殖場では、20,000匹の動物が飼育されています。その他の小さな養殖業者は、主に繁殖に力を入れ、それらのキツネを卸売業者または屠殺業者に販売します。そして、生皮は次の工程を扱う業者に渡り、次第に毛皮製品へと形を変えていくのです。
 
河北省にあるいくつかの養殖場が、今回の調査の対象となりました。一箇所あたりの動物の数は50匹から6,000匹におよびました。キツネのみを専門に扱うところもありますが、その他のほとんどが、ミンク、タヌキ、ウサギといった他の種類の動物も保有していました。
多くの養殖場で見られたキツネの種類は、異なった毛色を持つ、北極ギツネ系(シロギツネとアオギツネ)と、アカギツネ系(アカギツネと銀ギツネ)のものでした。業者は、自然の繁殖期の異なるこれらの種を人工的に交配します。世界の毛皮産業の統計によると、中国では毎年、100万匹分のミンクとキツネの毛皮が生産されています。これは、世界の全毛皮生産量のうち、ミンクは11%、キツネは27%にあたります。
 
多くの養殖業者は、毛皮の質の低下などの、近親交配による問題を抱えています。ある業者によると、多くの養殖場では、問題の打開策として、フィンランドからまとまった数の“フレッシュな”繁殖用個体を輸入しているとのことです。
フィンランドのTV報道によると、1998年5月だけでも、フィンランドから中国の養殖場向けに輸出された動物の数は200万匹にのぼりました(WSPAレポート)。黒龍江省では最近、繁殖だけを専門に行う施設が設立されました。ある業者によると、近々、同様の施設が河北省にも建設されるとのことです。この他にも、フィンランドのアオギツネの精子の販売や、人工授精についてのアドバイスを行うベンチャー企業などが存在します。
 
*2 中国消費者情報ウェブサイトwww.xfrb.cn
 

屠殺

 毛皮動物は、卸売市場と隣接した場所で殺されます。そこは、動物を売りに来る養殖業者と、毛皮の仕入れに来る大企業が出会う場所でもあります。その現場まで、生きた動物たちは、劣悪な状況の下、長距離の移動を経て輸送されます。
 
キツネやタヌキ、ミンクなどの動物達は、後ろ足を持って逆さにぶら下げられ、金属または木製の棒で何度も頭部を殴られます。その方法の替わりに、後ろ足を掴まれ、頭部を地面に叩き付けられる場合もあります。これらは主に動物を失神させる為に用いられる方法ですが、多くの動物は、痙攣したりもがき苦しみながら地面に横たわるのみで、息絶えることはありません。動物は次に、後ろ足でフックに吊り下げられ、ナイフを用いて、毛皮が腹部の下の方から剥がされていきます。ある屠殺現場では、毛皮を剥いだ後の動物の死体-人間の食用になる-が山積みになったトラックがすぐ横に止まっていました。業者は、宙吊りの動物の後ろ足から前に向かって徐々に、そして最終的には頭部も含めて完全に毛皮を引き剥がします。映像には、このプロセスの間中、完全に意識を保っていた動物が何匹も記録されました。
 
動物は最後の最後までもがき、無駄な抵抗を続けます。毛皮が完全に剥がされた後も、呼吸、心臓の鼓動、体の動きや瞬きが5~10分続いたケースもありました。
 
また、最初に完全に失神した動物も、毛皮を剥ぐプロセスの途中で意識を取り戻し、もがき始めることが何度もありました。業者は、またその動物が動かなくなるまで、ナイフの柄などを使って頭部を何度も殴ります。動物の頭や首の上に乗り、窒息させようとする業者もいました。
 

毛皮製品と価格

 中国で生産される毛皮製品は、毛皮単体、コートに留まらず、スカーフや帽子などのアクセサリー類、衣類の装飾や他の繊維と複合された衣類、玩具や家具などにもおよびます。
 
小売店の店員は、製品の価格は、使用されている毛皮の大きさ、重量、動物の種類やその毛皮の質に左右されると述べました。ほとんどの店では、そこで扱う毛皮製品はすべて、アメリカかフィンランドからの輸入製品であると謳っていました。これは、国内で生産された毛皮は質が悪いという思い込みが消費者の間に広く浸透していることを表しています。それ故、国内産の毛皮であっても、海外メーカーのラベルを付けて販売することにより、より高い価格での取引が可能となるのです。
 
生きたキツネは、個体あたりおよそ50~70ドルで売買されますが、その年によって、価格は変動します。中国のデパートでは、上質の毛皮のコートの値段は3,750~5,000ドルほどですが、最高級とされるものになると、12,500ドルにもなります。小売店や露天販売では価格が下がり、およそ1,250~2,500ドルとなります。
 

毛皮の処理

 中国は世界最大の毛皮製品生産国です。国内の毛皮生産に加え、毎年500万枚のミンクと150万枚のキツネの毛皮を海外から輸入しています。これらをすべて併せると、世界中で取引される毛皮全量の40%にもなります。これらの毛皮は、中国国内で染色され、ファッショナブルに色づけされた毛皮は再び世界の市場へと輸出されるのです。
 
2002~2003年にかけて、フィンランドで生産されたキツネの毛皮(845,325枚)のうち40%が中国および香港へ輸出されました。38%のミンクの毛皮(1,633,682枚)も中国へ輸出されています。しかし2004年、中国国内での毛皮の生産量が飛躍的に増加したため、ヘルシンキやコペンハーゲンの毛皮取引場では、多くの毛皮が売れ残る結果となりました。中国や香港の毛皮のバイヤーが買い付けをしなかったのです。
 
毛皮の為に殺される動物の数を考えるとき、それに伴って発生する副産物の環境への負荷も、無視することができません。膨大な量の血液、内臓などの廃物が蓄積した屋外の屠場からは、多くの環境汚染物質が発生します。
 
環境汚染の問題は、毛皮の染色施設にも言えます。クロミウムを含む危険な科学物質の数々は、周辺住人の健康・環境への重大な被害をもたらします。Shaanxi大学のチェン・フェンジア教授によると、「不適切な染色処理、特に毛皮のそれによって発生する公害は、大きな問題となりつつある」。*3 例えば、海寧省や浙江省にある市場では、毎日約100,000枚もの生皮が取引され、化学処理が施され、染色されているのです。
 
*3チャイナ・ビジネス・ウィークリー
 

輸出

 世界の毛皮産業の仕組みはとても複雑です。養殖業者によって、生きた動物から生産された生皮は複数の国へ転売され、様々な処理工程を経て、末端の消費者の手に渡ります。国際毛皮連盟(IFTF)は、その中でも中国が最大の毛皮輸出国であるとしています。中国で生産される毛皮製品のうち95%以上が、アメリカ、日本、韓国、ロシアへと輸出され、香港からは80%以上の毛皮がヨーロッパ、アメリカ、日本へと輸出されています。それらの輸出品には、毛皮のみの他、毛皮の付いた衣類や生地、毛皮の装飾の施された革製品などがあります。中国税関の統計によると、2003年だけでも9億9,700万ドル分の毛皮の取引があり、これは2002年と比較すると、42.5%の増加となります。*4 中国はまた、毛皮製品においてトップの対米輸出国となっており、2004年に米国が輸入した全毛皮製品の40%-7.9百万ドル相当-を中国製が占めています。*5 しかしながら、毛皮が衣類の装飾用としてのみ使用してある場合、税関での申告の必要がないため、中国からの正確な毛皮の輸出量を把握するのは大変困難です。また、毛皮販売業者は大量の在庫を輸入し、他国へ再輸出することもあるため、統計を余計複雑なものにしています。
 
多くの毛皮小売業者は、低賃金労働による大量生産というイメージを払拭するため、販売する製品に使われている毛皮の本当の産出国を公表することを嫌います。中国から輸入された毛皮であっても、小売業者が消費者にそれを販売する際、毛皮の出所を明確にする義務はありません。何らかの表示があったとしても、「イタリア製」「フランス製」などと表示しているケースもあります。毛皮が衣類の装飾のみであった場合、その動物の種類さえも、消費者にとってはもはや明らかではありません。しかしながら、スイスとロンドンで行われた、無作為の業界調査では、高級ブランドの中に、中国製の毛皮製品が多数確認されました。
 
国際的な毛皮販売市場において、いわゆる伝統的な「毛皮専門店」の経済的に占める割合は、過去10年間で著しく低下しています。多くの国では、それらの専門店がもたらす毛皮の売上額は、取るに足らないものとなっています。2005年1月のサンディ・パーカー・レポート(注:毛皮業界の動向やニュースを伝える業界週刊誌、発行元:Sandy Parker Reports , PO Box 348 Merrick NY 11566)は、「毛皮専門店は、かれらの潜在的な毛皮市場が、他の販売店によって獲得されてしまっていることに留意する必要がある」と述べています。「専門店の売上げがたとえ横這い、または多少増加していたとしても、デパートやブティックなどの他の服飾小売店における毛皮の販売高は過去2年間において激増しており、その増加分に、専門店はほぼ貢献していないと言っても過言ではない。言い換えれば、専門店や毛皮を主に扱うデパートの売上げが減少していたとしても、それは毛皮の需要が減っているということではなく、消費者は、欲しい物を他のところで手に入れている、とも言える」*6
 
*4チャイナ・ビジネス・ウィークリー
*5メルボルン・ペーパー 2005年1月10日号
*6サンディ・パーカー・レポート 2005年1月10日付
 

中国の毛皮養殖場における福祉と健康

 中国の巨大な毛皮産業で日常的におこなわれている飼育、輸送そして屠殺の方法は、獣医学、動物福祉、そして道徳的見地からも受け入れられるものではありません。
 
調査されたすべての養殖場で、動物はいたるところで乱暴に扱われ、小さな金網のケージに不適切に押し込められていました。病的で極端な行動の兆候はいたるところで目立っていました。その他、福祉が粗末なために引き起こされる幼獣の高い死亡率、自分の身体を傷つけることや親による子殺しも目についた兆候でした。屠殺の方法はおぞましくも非人道的であり、何百万という動物は、暴力と、壮絶な苦しみに満ちた長い死への道のりを堪えなければなりません。
 
中国は世界で最も大きな毛皮の生産、加工国です。毎年、想像を絶するほどの数の動物が、中国の毛皮養殖場と屠殺場へ、毛皮のために強制的に送られてきますが、この国では、動物の福祉についてのどのような法的な規制もありません。最近持ち込まれた立法案は昨年、握り潰されてしまいました。
 
ある中国の毛皮養殖業者は次のように述べています。「中国では毛皮用動物に関する法律は何も必要はありません。われわれ中国人は、フィンランド人の能力と毛皮養殖のノウハウを信じていますし、フィンランドでは1000年も前から毛皮動物を繁殖させています。」
 

問題行動と拘束

 個体が人工的な環境におかれた場合、環境とそれに伴う行動の多様性は激減します。加えて、捕われの動物は毎日の行動の全てが人間の目にさらされ、それをコントロールされることに堪えなくてはなりません。動物は自然界の状況に自分たちの行動を適応させ、物事に近づいたり、攻撃したり、追跡や探検、そして隠れたり避けたりすることによって、受ける刺激の量をコントロールすることができます。身の回りの“状況の変化”により、こうしたことを上手にやり遂げていくことは、拘束された状況の中ではほとんどできなくなります。環境を自身でコントロールできないこと、苦境から逃れられない状況は、動物の精神に深い損傷を与えます。よって、多くの慢性的なストレス行動の要因は、拘束された環境に固有のものと言われています。
 
ケンブリッジ大学、獣医学部のドナルド・ブルーム教授は、動物の不自然な行動は、慢性的な福祉の欠如から見受けられるものだと主張しています。これは、彼らが必要とするものを得られない状況とそれに伴う欲求不満から引き起こされます。「必要とするもの」とは、より広いスペースであったり、より刺激的あるいはより静かな環境であったり、特定の行動を行うこと、社会的または性的なパートナーを得る、といったことを意味します。
 
中国の毛皮養殖場のキツネ、タヌキ、ミンクそしてウサギは、硬い金網のケージの中に閉じ込められています。
 
スイスでは次のような規制が設けられています、2頭のキツネを飼育する場合、最低でも屋外は30㎡、そして屋内は最低8㎡の広さを与えなくてはなりません。穴を掘れる自然の土、寝場所や隠れ場所などの設置も義務付けられています。2頭のミンクは屋外は最低6㎡、そして泳ぐことができる状況であること。2頭のタヌキは、屋外最低30㎡、屋内最低8㎡のスペース、そして自然の土と隠れ場所を与えなくてはなりません。これらはスイスにおける最低限度の規制です。ヨーロッパのガイドラインは、畜産動物保護の為のヨーロッパ議会常任委員会(Standing Committee of the European Convention for the Protection of Animals Kept for Farming Purposes)による「毛皮動物に関する推奨基準」(Recommendation Concerning Fur Animals)の中で、毛皮動物のことが位置づけられています。養殖場のキツネのケージ部分は最低0.8㎡の面積が条件づけられています。中国の養殖場のキツネとタヌキのケージはおよそ90cmx70cmで、面積は0.63㎡となります。つまり中国では、より大きなキツネとタヌキのケージですら、ECの勧告である最低の床面積より3分の1狭く、そして14%(10cm)低くなっています。
 
養殖場のキツネは、激しい恐怖に苦しむことが知られています。乱暴に扱われたり、他のキツネと一緒にケージに押し込まれたり、人間が接近したりすることによってそれは更に悪化していきます。ヨーロッパ審議会の勧告によると、キツネは常に巣箱を与えておくべきだとされています。中国の毛皮養殖場ではこれを無視し、キツネを不適切なケージに詰め込んでいます。恐怖はストレスとなり、不健全な行動を引き起こし、育児中の母キツネの子殺しや育児放棄なども日常茶飯事です。これらは、自身の体を傷つける行動と共に、どこの養殖場でも見受けられました。極度の恐怖に加え、養殖場のむき出しのケージでの飼育が、キツネの繁殖率を大幅に下げる最大の原因となっているという報告があり、キツネという種の飼育における福祉の大きな問題点とされています。これらのことから、スイス以外のいくつかのヨーロッパの国々では、キツネ養殖を禁止、または厳しく制限しています。EUの更なる勧告では、タヌキに関しても、福祉的見地での調査が完全に行われるまで、この動物を毛皮のために養殖することを制限するよう要求しています。
 
ケージの中の動物に見られる、繰り返しの行動パターンは、常同行動(紋切り型の異常行動)として知られています。常同行動は、反復または不変行動のパターンで、機能的な意味合いを持ちません。このような行動は動物が拘束された時によく見られ、肉食動物の場合、前後に行ったり来たりというのが典型的です。また、行ったり来たりする際に同時に別のことを繰り返す-頭を振る、頭をグルグル回す、等-ということが、特に養殖場のミンクによく見られます。
 
常同行動は拘束された動物への乏しい福祉と関連があり、ストレスと嫌悪感から引き起こされるということが50年以上にわたり確認されています。この状態は、狭くて刺激のない環境や、避けることの出来ない恐怖と欲求不満によって起きることが、科学的に検証されており、特に、不適切で人工的な狭い檻の中でよく見られ、動物がストレスに満ちた状況から抜け出せないために起こります。例えば、ケージの広さは、常同行動を引き起こす大きな要因であることが確認されています。科学的な調査は、福祉の欠落が常同行動を引き起こし、精神に異常をきたす要因となると証拠付けています。つまり、“常同行動をしている個体はすべて、それが問題を抱えていることを示している”のです。 
 
オックスフォード大学のロス・クラブ博士の研究によって、拘束された中で、自然行動への制限が大きくなればなるほど、常同行動やその他の福祉の欠落によって起こる兆候が肉食動物では特に強くなることが発見されました。自然界でより広い距離を動き回る動物は、狭い距離を移動する動物と比べると、最も高い常同行動と幼獣の死亡率を引き起こしています。クラブ博士はまた、毛皮のために養殖される動物の常同行動の調査も行っています。養殖キツネの常同行動についての数件の研究はどれも、常同行動は稀であり、それの占める時間は、一日平均1%以下であるという結果を示しています。今回の調査において中国で観察および撮影されたキツネには、慢性の激しい常同行動が確認され、飼育状況の不適切さが、深刻な福祉の問題を引き起こしていることを物語っています。
 
中国の毛皮養殖場のキツネは、無行動や無反応であることが多く、さらにケージの奥にうずくまったままの状態でも多く観察されました。自身の身に起こっているコントロール不可能な不快な刺激は、“どうすることもできないと悟った”状態を引き起こし、無反応へとつながりますが、これは一見したところ、環境への順応による“慣れ”と混同されがちです。しかし、逃れられない不快な状態に対して“あきらめ”てしまうという究極の心理反応は、著しい福祉の欠如の表れといえます。
 

毛皮の品質

 毛皮業界が常に用いてきた、毛皮を擁護する主張のひとつに、毛皮の品質の良さは動物たちが大切にされている確かなしるしなのだというものがあります。“毛皮動物養殖と福祉の充実は切っても切れない関係にある”(BFTA: www.britishfur/mediarels/22may2002.html)といった謳い文句は良識的に聞こえますが、事実はそれほど単純なものではありません。キツネとミンクは、その毛皮が最高品質の時、つまり冬毛が生え変わった最初の年に殺されます。長年にわたる、質の良い毛皮を作る動物の選別繁殖の結果、その毛皮の質は、伴侶動物などのように、福祉の状態にさほどの影響を受けなくなっています。毛皮用動物の福祉に関するレポートの中で、ヨーロッパ審議会の動物の福祉と健康における科学委員会(Scientific Committee on Animal Welfare and Health of the European Commission)は、「毛皮の美しさと密度からは、福祉の充実度を推し量ることはできない。よって、明らかな傷病や噛み傷などの極端な場合は例外として、ミンクの毛皮の状態は、福祉の評価よりも、生産過程の評価に用いられるべきものと考えられる」(p73)と報告しています。
 
幼獣の死亡率
 
子殺しはキツネ養殖場で一般的な問題となっています。中国のあるキツネ養殖場のオーナーによると、乳離れするまでの子ギツネの死亡率は平均して50%です。これは養殖用キツネとしては異常に高い数価です。スウェーデンでは、乳離れ前の子ギツネの死亡率は、15%~30%となっています。フィンランドの毛皮業界誌 ' Tukistalous'では、死亡率は1990年に30%と計算されています(WSPAレポート、92)。ヨーロッパ審議会のレポート、毛皮生産用動物の福祉に関するレポート(The Welfare of Animals kept for Fur Production) へのノルウェーの報告では銀ギツネの子の死亡率は16.8%、アカギツネの子の死亡率は22%となっています(Den Norske Pelsdyrkontroll 1999年)。
 

人工授精

 人工授精は、中国も含め、毛皮養殖場では一般的に行われています。フィンランドでは、人工授精は福祉の点からも問題とされ、動物保護団体のANIMALIA(WSPAレポート、93)は、毛皮養殖場の労働者からも数多くの報告を受けています。人工授精のほとんどは、自然界では繁殖期の重ならないアオギツネとアカギツネの交配に使われます。報告によると、「メスが傷つかないよう、正確なタイミングが必要です。もし、熱感知器(発情期を知る器具)と人工授精器の使用が早過ぎると、メスを傷つけてしまいます。熱感知器のボルテージが高すぎると発作を引き起こします。人工授精の行われる不潔な環境と、粘膜の組織の破壊によって、何千匹もの動物が犠牲になっていると報告されています。精液の摂取は雄ギツネにとって大変不快な処置で、クリップで歯を挟まれたまま逃げようとして、歯を損傷します。この処置を同じキツネに対して一週間に何度も繰り返し行います」(WSPAレポート、93)
 

結論

 中国の毛皮養殖場では、最小限の動物福祉の基準さえ、満たしてはいません。その筆舌に尽くしがたい生と死の中で、動物たちは最小限のいたわりすら与えられていません。その代わり、何百万もの動物たちは、ファッションの名のために、苦しみ、尊厳および基本的な要求を、完全に無視され、生かされています。このレポートは、中国の巨大な毛皮産業における動物の飼育、輸送、屠殺の方法は、獣医学的、福祉的、道徳的観点から、到底受け入れられるものではないことを示しています。
 
業界筋によると、毛皮は、ファッション界でふたたび息を吹き返したと言われています。350名以上の国際的なトップファッションデザイナーが、今日、毛皮をコレクションの中に加えています。かつてないほどの商品ラインナップ、加工方法、新色のセレクションと共に、国際毛皮連盟(IFTF)は、毛皮をファッションの“マストアイテム”として、巨大な市場に巧みに販売しています。毛皮のロングコートを買うことには尻込みする消費者でも、毛皮の襟や縁取りの付いたコートやパーカ、スカーフ、マフラー、毛皮をあしらったハンドバッグなどには、つい手を伸ばしてしまいます。あるいは毛皮の“動物っぽさ”を分かりにくくするため、刈り込んだり、編んだり、染めたり、又は別の生地と組み合わせるという手法も使われます。毛皮はかつてのような贅沢品ではなく、大量生産の“お手頃商品”になったのです。しかし、その代償は何でしょうか?毛皮の縁取り程度なら、大したことはないように思えるかもしれません。しかし毛皮は毛皮なのです。それを衣服に取り付けるためには、動物は死ななければならないのです。そしてこの映像が示すように、その死は楽なものではありません。それは命として扱われてすらいません。中国が大きな位置を占める、国際的な毛皮産業界は、消費者に間違ったことを植え付けようと躍起になっています。キャサリン・アガ・カーン(Catherine Aga Khan、第4代国連難民高等弁務官サドルディン・アガ・カーン氏の妻)の言葉を借りると、「消費者として、私たちは宣伝に騙されてはいけません。“人道的に作られた毛皮”など、存在しないのです」(WSPAレポート)はっきりさせましょう: IFTFは、巨額をかけたPRキャンペーンを繰り広げ、婉曲した表現により、何百万の動物たちのあの悪夢のような恐るべき生と死の非情な現実を、華麗で美しく、光り輝くファッションの背後に、隠しているのです。*7
 
*7 IFTFのウェブサイト:“動物は苦痛を与えずにすみやかに(数秒以内)殺されている”( www.iftf.com/farming/farming1.asp )
 
国際市場における毛皮の生産、加工、販売拠点が、IFTFの一員でもある中国に加速的に移行していることは、今回の調査によって明らかにされた数々の問題を、私たちは誰も無視することはできないことを意味します。中国は世界最大の毛皮製品の輸出国であり、EUは世界最大の毛皮製品の消費国(地域)だからです。スイスとロンドンのブティックで行われた市場調査で、“中国製”のラベルが貼られた毛皮製品が大量に確認されたことは、驚くべきことではありません。
 
アムステルダム条約の中でEU連合国は、“動物を感情を持つ存在として尊重し、福祉の改善に努めること”を宣言しています。しかしながら、飼育、輸送、そして屠殺の方法が、EU、英国、スイスなどの動物福祉基準に到底及ばないこのような状況を、私たちは黙認しているのです。
 
英国毛皮協会のウエブページには誇らしげにこう記されています。“消費者の皆さんが毛皮を求めてお店に足を運び、お金を使うことが、何よりの毛皮へのサポートの証拠です”(www.britishfur.co.uk/mediarls/28jan2002.html) 確かに、私たちの消費活動は世界を動かします。毛皮業界の言うとおりです。毛皮を買うことは、それを選択するということです。このレポートが、これから毛皮を買いたいと思っているかもしれない多くの人々に、知識を与え、その「選択」の指針となるよう願ってやみません。毛皮養殖に関しての議論の中で、国際的毛皮産業界は、“イギリス固有の公正なる分別”に訴えかけています。私たちも、公正なる分別を行使するときです。
 
この調査で明らかにされた事柄を元に、私達は以下のことを要望します:
 
  • ファッションデザイナーは、コレクションから毛皮を排除し、動物への暴力を伴わない生地を使用すること
  • 消費者は、毛皮のコートやアクセサリー、縁取りのついた衣類を買わないこと
  • 消費者は、毛皮をコレクションに入れているデザイナーを調べること
  • 消費者は、所有している衣類から毛皮を取り除くこと
  • 小売業者は、毛皮装飾のついた服やアクセサリーなどを店舗に置かないこと
  • ヨーロッパ議会は、中国からの毛皮製品の輸入を禁止すること
  • 中国政府は、動物の皮を生きたまま剥ぐことを禁止する法律をただちに制定すること
  • 中国政府は、非人道的な飼育と屠殺を禁止する法律をただちに制定すること
  • 中国政府は、非人道的なやり方で動物を監禁・拘束することを禁止する法律を作ること
  • ​フィンランドのブリーダーはキツネを中国に輸出することをやめること


※写真は残酷なシーンを含みます、しかし、これは真実であり、日本に輸入される毛皮の実態です。

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