日本の生態系を壊したリアルファー産業
日本の生態系を壊した毛皮産業
アメリカミンク(学名:Neovison vison)は、北アメリカ固有の種であり、100年前に毛皮に利用するために輸入され、繁殖させられてきた。
現在、日本国内で繁殖している業者は、新潟県にあるOミンク養殖場のみとなっているはずだが、かつては北海道から西日本まで毛皮動物養殖場が広がっていた。
そして、業者のずさんな管理のために、動物が逃走し、各地域の生態系に入り込み、帰化(定着)してきた。
生態系の破壊
この状態が、2004年に出来た特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)で、大きな問題に変わった。
日本古来の生態系の保護の中で、近年海外から人為的に持ち込まれた動物が、日本古来の生態系を破壊していると認識されるようになったためだ。
2006年には、アメリカミンクも特定外来生物という殺処分の対象になった。
しかし、すでに各地でアメリカミンクは繁殖しその生息地域を広げていたため、多くの地域で殺処分が行われるようになったのだ。
繁殖が確認されている地域は以下のとおりである。
北海道
宮城県
福島県
群馬県
長野県
新潟県(2006年に捕獲されていると報じられている)
主に北海道だが、殺処分の計画は146件*1にも及び、この件数は毎年増加している。北海道は全域にすでに広がっており、本州も徐々に広がっている。地続きなだけに、今後は他県にも広がる可能性は十分にあるだろう。福島県では海外でも例を見ないほど多く繁殖しており、すでに多数生息している阿武隈川などを経て宮城県にも広がるのではとの懸念が示されている*2。
さらに、今後、ずさんな管理を引き続き行っているOミンク養殖場のあった新潟県でも繁殖し殺処分が行われるようになる可能性は高い。
予防が機能していない
外来生物法には、殺処分を行う防除という考え方の他に、繁殖を予防するために飼育・繁殖・移動を規制するという側面もある。
特定外来生物であるアメリカミンクは、原則飼育・繁殖・移動は禁止されており、逃亡防止のための檻の二重化などの規定をクリアする施設をもっている業者のみが環境省の許可を経て、飼育が可能である。
しかし、2006年から新潟県のOミンク養殖場は許可を得ずに長年違法営業を続けてきた。
さらには、この養殖場の施設は、檻の二重化どころか、ケージが屋外に並んでいるのみの状態であり、そのケージも穴が開いていたり、壊れたケージが並んでいたりという施設である。さらに逃がしたときの様子をfacebookで堂々と記載していたほどだ。
このような施設であっても、許可無く営業が可能なほど、規制は機能していない。
殺処分のみを増やしたところで、その一方で繁殖・飼育が行われ続けていれば、いつまでたっても殺され続けるだけだ。
毛皮産業の罪
毛皮産業が日本の生態系に及ぼした悪影響は非常に大きい。
アメリカミンクだけでなく、福井県、岐阜県、愛知県、三重県、大阪府、京都府、滋賀県、奈良県、兵庫県、岡山県、広島県、山口県、鳥取県、島根県、香川県、愛媛県に広がるヌートリアも毛皮産業により広がった。その殺処分の計画はアメリカミンクよりも多い162件*1だ。数千頭~数万頭の動物がただその種であると言うだけでころされるという大量虐殺が起きている。
毛皮という、人々の欲望、金のために犠牲になった動物たち。
さらに、生態系への悪影響のつけは、すべて罪のないこれらの動物の命で償われるのだ。
*1 https://www.env.go.jp/nature/intro/3control/kakunin.html 2017年
*2 http://karapaia.com/archives/51777795.html 奥羽大(郡山市) 伊原禎雄助教の研究